Works & Projects Background
Our Works

開発事例

ビジネスの成長をテクノロジーで牽引する。私たちが手掛けたシステム開発とDX推進のプロジェクト実績をご紹介します。

事例 #1Web Application / AI
大手人材サービス企業 様

次世代AI型 採用マッチングプラットフォームのゼロスクラッチ開発

次世代AI型 採用マッチングプラットフォームのゼロスクラッチ開発のアイキャッチ

1. プロジェクトの背景と直面していた深刻な課題

大手人材サービスを展開するクライアント様は、長年にわたり業界を牽引してきましたが、近年の一気に加速する人材流動化と、多様化する求職者のニーズに対して、既存のレガシーな求人プラットフォームでは対応が限界に達していました。特に深刻だったのが、「企業が求めるスキル」と「求職者が持つスキル・志向性」の恒常的なミスマッチです。月間数百万セッションものアクセスがあるにも関わらず、適切な候補者に適切な求人が届いていない状態が続いていました。

これまで、このミスマッチは熟練のキャリアエージェントの「勘と経験(属人的なマッチング)」によってカバーされていました。しかし、登録者数が数十万人規模に膨れ上がる中、エージェント1人あたりの業務負荷が爆発的に増加。結果として、求職者へのレスポンス遅延や、的外れな求人を紹介してしまうケースが散見されるようになり、プラットフォーム全体の成約率および顧客満足度の低下という、ビジネスの根幹を揺るがす危機に直面していました。

レガシーシステムの技術的負債も限界を迎えており、ちょっとした機能改修にも数千万〜数億円単位の開発コストと数ヶ月のリードタイムがかかる状態でした。この負の連鎖を断ち切るため、弊社に「プラットフォームの全面リニューアル」および「AI技術によるマッチングの自動化と高精度化」の打診をいただきました。

2. AIによる「隠れた志向性」の可視化とアルゴリズム設計

私たちはまず、エージェントがどのように求職者と企業をマッチングしているのか、その「暗黙知」を徹底的に言語化する業務分析から始めました。そこで判明したのは、職務経歴書のテキスト情報だけでなく、面談時の細かなニュアンスや、サイト上での行動履歴(どの求人を何秒見たか、何をクリップしたか、どのキーワードで再検索したか等)が意思決定の重要なファクターになっているということでした。

この課題を解決するため、過去10年間に蓄積された数百万件の成約データおよび失敗データを機械学習アルゴリズム(独自構築のハイブリッド・レコメンドエンジン)に学習させました。自然言語処理(NLP)を用いて職務経歴書のフリーテキストから専門スキルを自動抽出し、企業側の募集要項と多次元ベクトル空間上で照合します。

単なるキーワードの一致や協調フィルタリングにとどまらず、「この技術スタックを持つエンジニアは、次にこの分野(例えばGo言語やクラウドアーキテクチャ)に強い興味を抱きやすい」といった隠れた志向性やキャリアパスの相関性までもグラフ・ニューラルネットワーク(GNN)を用いて計算し、求職者自身も気付いていない潜在的な適職を高精度に自動提案する仕組みを実装しました。

3. 大量データを捌くスケーラブルなアジリティ基盤

フロントエンドには、SEO対策と爆速のページロードを実現するため Next.js (React)TypeScript を採用。求職者がスマートフォンからでもストレスなく閲覧・応募できるよう、徹底したモバイルファーストのUI/UX設計を行いました。とくに、AIが都度計算するおすすめ求人の表示速度にはこだわり、サーバーサイドレンダリング(SSR)とエッジコンピューティング(Edge Functions)を組み合わせることで、パーソナライズされた動的コンテンツでありながら、ミリ秒単位のレスポンスを実現しています。

バックエンドおよびインフラには、突発的なトラフィック急増や将来的なデータ量の増大に耐えうるよう、Google Cloud (GCP) を中心としたサーバーレス・マイクロサービスアーキテクチャを構築しました。

AI推論APIはPython(FastAPI)で独立したサービスとしてデプロイし、Cloud Run上でトラフィックに応じてゼロから数千コンテナまで自動スケールする構成に。また、企業と求職者がシームレスにやり取りできるリアルタイムチャット機能や、面接の自動スケジュール機能も実装し、マッチング後のコミュニケーションロスを極限まで排除するアーキテクチャを確立しました。

4. ビジネスにもたらした劇的なインパクト

本番稼働からわずか半年で、プラットフォームは驚異的なビジネス成果を叩き出しました。AIによる高精度なリコメンドが機能したことで、プラットフォーム経由の面接設定率(コンバージョン)は前年同月比で驚異の240%増を記録。

  • トップライン(売上)の拡大: マッチング精度の向上により早期退職率が劇的に低下し、クライアント企業からの継続的な求人出稿が増加。システム投資額をわずか1年で回収し、事業全体で年額数億円規模の売上純増に貢献しました。
  • エージェントの業務負荷を劇的に削減: AIによる事前の一次スクリーニングと自動マッチング提案により、エージェント1人あたりの求人探しにかかる時間が大幅に短縮され、組織全体で月間約8,000時間もの物理的な工数削減を実現。
  • 本質的なコンサルティングへの集中: 削減された時間を使って、エージェントは求職者のキャリア相談や面接対策、条件交渉といった「人間ならではの付加価値の高い業務」に専念できるようになりました。

「単なるシステム開発」にとどまらず、クライアント様のビジネスモデルそのものを「労働集約型の人材紹介」から「AIを駆使したデータドリブンなマッチングプラットフォーム」へと昇華させることに成功しました。現在は、さらにLLM(大規模言語モデル)を組み込んだ自動職務経歴書ブラッシュアップ機能の追加など、次なる成長への開発に伴走しています。

Tech Stack

Next.jsReactTypeScriptNode.jsPythonFirebaseGoogle CloudMachine Learning
事例 #2System Integration / DX
中堅製造業向け 専門商社 様

オンプレミス型 レガシー基幹システム(ERP)のフルクラウド移行とモダナイゼーション

オンプレミス型 レガシー基幹システム(ERP)のフルクラウド移行とモダナイゼーションのアイキャッチ

1. 「2025年の崖」に直面したレガシー重厚長大システム

中堅製造業に向けた産業用機械や部品を専門に取り扱う商社であるクライアント様は、約15年前に導入されたオンプレミス環境のC/S(クライアント・サーバー)型基幹システム(ERP)をだましだまし使い続けてきました。しかし、事業の急速な拡大に伴う度重なる機能追加によって、ソースコード全体は完全に「スパゲティ状態」に陥り、全体像を把握できるエンジニアが社内に1人しかいないという典型的なブラックボックス化を引き起こしていました。

さらに、システムを稼働させている物理サーバー群の保守期限(EOS)が目前に迫っており、ハードウェアの老朽化による突発的な業務停止リスクや、日次バッチ処理が翌朝までに終わらないというパフォーマンスの限界に直面していました。

法改正や税率変更への対応遅れ、ランサムウェア等の新たなサイバー攻撃への脆弱性など、経営の屋台骨を脅かす地雷をいくつも抱えている状態であり、まさに経済産業省が警鐘を鳴らす「2025年の崖」の最前線に立たされていました。一刻も早いシステムの刷新が至上命題であったため、弊社に再構築の最上流コンサルティングから開発実行までをお任せいただきました。

2. リホストか、リライトか。業務のBPRと大胆な断捨離

初期のフェーズでは、コストと期間を抑えるために既存のロジックをそのままクラウドのIaaS環境に移行する「リホスト(Lift & Shift)」の案も挙がっていました。しかし、徹底的なデューデリジェンス(業務・システム現状分析)を行った結果、既存システムの機能の約40%は「既に誰も使っていない」か「より便利なExcelやSaaSツールで代替されている」という衝撃の事実が判明しました。

負債をそのままクラウドに持ち込むことは、中長期的な技術的負債を増大させ、ランニングコストを悪化させるだけだと判断した私たちは、強いリーダーシップを持って「フルリライト(スクラッチ開発)によるモダナイゼーション」をご提案しました。

要件定義フェーズにおいて、クライアント様の経営層および各部門のキーマンを巻き込んだワークショップを数ヶ月にわたり開催。過去の複雑で属人的な業務フローをBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の観点から徹底的に見直し、不要な業務プロセスを断捨離。本当にシステム化が必要なコア機能だけに絞り込むことで、開発スコープの肥大化を防ぎ、真の業務効率化のグランドデザインを描き切りました。

3. モダンなアーキテクチャへの全面刷新とIaCの導入

開発においては、保守性・拡張性・セキュリティの3つを数十年にわたって担保できる最新かつ安定した技術スタックを選定しました。フロントエンドには ReactTailwind CSS を採用。旧システム特有のマニュアルなしでは操作不可能だった「ファンクションキー依存の無骨な画面」から、新入社員でも直感的に操作できるモダンでレスポンシブなWebアプリケーション(SPA)へとUI/UXを劇的に刷新しました。

バックエンドは、堅牢かつ開発スピードに優れる Django (Python) を用いたRESTful APIベースに再設計。これにより、将来的な他システム(CRMや外部の物流APIなど)との柔軟なシステム間連携を容易にする疎結合なアーキテクチャを実現しています。

インフラ基盤はすべて AWS 上に構築。Terraform によるInfrastructure as Code (IaC)を全面的に導入して環境構築を自動化・コード化し、稼働環境は DockerAWS ECS (Fargate) を併用した完全マネージドなコンテナ構成としました。これにより、サーバー保守という運用負荷の極小化、およびピーク時のアクセス増減に耐えるオートスケール環境を実現しました。データベースもフルマネージドの Amazon RDS (PostgreSQL) へと移行し、マルチAZ構成の強固なディザスタリカバリ(DR)体制を確立しました。

4. 無停止データ移行と、働き方の変革によるコスト削減

移行プロジェクト最大の難所であった「長年蓄積された巨大で不整合なデータベースのクレンジングと新スキーマへの移行」も、数ヶ月に及ぶ入念なデータマッピング検証と並行稼働テスト(シャドウラン)、そして専用のETL移行パイプラインの開発によって、わずか週末の休日のダウンタイム内でノートラブルで完全移行を完了させました。

  • 数億円規模のコスト最適化: 高額だったオンプレミスサーバーの機器更新費用、高価な商用DBライセンス料、空調費用、そして物理的な保守に関わる運用費用を手放したことで、5年間のTCO(総所有コスト)シミュレーションにおいて約2.5億円のダイレクトなコスト削減を達成しました。
  • 多様な働き方の実現(テレワーク・ハイブリッド対応): セキュアなパブリッククラウド環境(ゼロトラストネットワークアクセス)に移行したことで、これまで社内の専用端末からしか触れなかった基幹システムに、営業先のタブレットや自宅PCからも安全にフルアクセスできるようになり、全社のDXと働き方改革を強力に推進しました。
  • 属人化の解消と開発生産性の向上: ブラックボックス化していたコードがモダンなReact/Pythonのコードベースへと整理され、テスト自動化(CI/CD)が導入されたことで、新規事業に合わせた追加開発のリードタイムが従来の1/3以下に短縮されました。

本プロジェクトは単なる「ITシステムの入れ替え」に留まらず、「システムに合わせて人が非効率に動く」状態から「人の業務をモダンなシステムがスマートにアシストする」という、クライアント企業のビジネス変革そのものを成し遂げた歴史的なマイルストーンとなりました。

Tech Stack

ReactTypeScriptPythonDjangoPostgreSQLAWS ECSTerraformDocker
事例 #3Generative AI / RAG
国内最大級 メディア&出版カンパニー 様

LLM技術を用いた社内膨大ナレッジ検索・要約AIチャットボットの開発

LLM技術を用いた社内膨大ナレッジ検索・要約AIチャットボットの開発のアイキャッチ

1. 組織の急成長とともに埋没していく「暗黙知」

国内最大級のメディアおよび出版カンパニーであるクライアント企業様。長い歴史と多岐にわたる事業展開の裏で、社内のファイルサーバーや各種クラウドストレージ(Google Drive、SharePoint等)には、数十年分の記事原稿、企画書、取材メモ、進行管理ルール、さらには過去の法務トラブル対応履歴など、まさに「知の遺産」とも呼べるドキュメントが数千万ファイル規模で無秩序に散在していました。

情報の爆発的な肥大化により、「過去の類似したヒット企画の骨子を探したい」「特定の業務規定の最新版を確認したい」といった時に、社員が目的のファイルにたどり着くために毎日数十回もの検索窓を叩き、膨大な時間を浪費していました。

さらに悪いことに、経験豊富なベテラン社員だけが「どの情報がどのフォルダの階層にあるか」を属人的に把握している状態(知識のサイロ化・暗黙知化)が起きており、新入社員のオンボーディングコストが高騰。組織としてのナレッジの共有・再利用のエコシステムが完全に崩壊しているという、経営レベルの大きな課題を抱えていました。

2. 従来の「検索」からAIによる「文脈理解・推論・回答」へ

従来型の全文検索システム(Elasticsearchベースのエンタープライズサーチ)も導入されてはいましたが、「キーワードが完全に一致しないとヒットしない(類義語や文脈、表記揺れに弱い)」「大量の検索結果から、結局ファイルを開いて数十ページの中身を読まないと答えがわからない」という点で限界を迎えていました。

そこで私たちは、単に「ファイルを探す」のではなく、「社内の知識を全て理解し、社員からの曖昧な質問に直接テキストで要約して答えてくれる、AIを持った超優秀なアシスタント」を作れないかと考えました。

昨今急速に発展している生成AI(LLM: 大規模言語モデル)と、外部知識を組み合わせて回答を生成するRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術の可能性に着目。社内専用の高度なAI検索・推論チャットボットシステムをスクラッチで構築する、大規模なAIトランスフォーメーションプロジェクトがスタートしました。

3. 泥臭いデータクレンジングと、ハイブリッド検索RAGアーキテクチャ

AIを賢くするためには「良質なデータ」が不可欠ですが、最初の巨大な壁は「ファイルフォーマットの多様性と極端なノイズ」でした。PDF、Word、Excel、PowerPointはもちろん、OCRが必要な手書きのスキャン画像や、古くはShift-JISで保存されたテキストファイルまで無数に存在しました。私たちは強力なデータ抽出パイプラインをPythonで構築し、これらのドキュメントからテキストを正確に抽出・正規化。さらに文書を意味の文脈が途切れない適切なサイズ(セマンティック・チャンキング)に分割し、不要なヘッダーやフッターを取り除く高度な前処理(ETL)を実装しました。

クレンジングされたテキスト群は、OpenAIの最新のEmbedding APIによって高次元のベクトル表現に変換され、超高速な類似度計算が可能なフルマネージドのベクトル・データベース(Pinecone)に格納されました。精度を極限まで高めるため、ベクトル検索とキーワード検索を組み合わせた「ハイブリッド検索+リランキング(Re-ranking)」の仕組みを導入し、検索精度を飛躍させました。

ユーザー向けのインターフェースは、日常的に業務で利用されている Microsoft Teams および Slack とWebhookでAPI連携させることで、全く新しいツールを導入する学習コストをゼロにしました。バックエンドのコアロジックは FastAPI (Python) および LangChain にて実装。また、企業の機密情報の漏洩(データガバナンス)を防ぐため、プラットフォームにはエンタープライズグレードの強固なセキュリティを持つ Azure OpenAI Service (GPT-4モデル)を採用し、プロンプト入力や企業データがAIモデルの学習に二次利用されない、完全に閉域化されたセキュアな環境を構築しました。

4. AIの「嘘」を防ぐハルシネーション対策と権限制御(RBAC)

ビジネスの現場、とくにメディア企業でAIを活用する際の最大のリスクは「ハルシネーション(AIがもっともらしい嘘・幻覚を出力すること)」です。これを完全に抑え込むため、高度なプロンプトエンジニアリングとシステム制御のレイヤーを実装し、「必ず検索でヒットした社内ドキュメントの情報のみに基づいて回答すること」「情報が不足している場合や推測による補完は絶対にせず、『社内資料には該当箇所が見当たりません』と回答すること」を強制するメカニズムを組み込みました。

さらに最も重要な信頼性の担保として、AIが回答を生成した際に、「どのドキュメントの、どのページの、どの段落を参考にしてその回答を組み立てたか」という出典証拠(参照元ファイルへの直接リンク情報)を必ず回答の末尾に提示する仕様にしました。これにより、人間は必ずワンクリックで一次情報(元ファイル)を確認・ファクトチェックできるようになり、AIの出力を鵜呑みにしない健全な業務フローが確立されました。

同時に、Active Directoryと連携したロールベースのアクセス制御(RBAC)を検索クエリのレイヤーに組み込み、「経営企画部の社員には経営会議の議事録を検索・要約させるが、一般社員にはそもそも検索ヒットすらさせず回答しない」という厳格な情報隔離の要件を満たしました。

5. 誰もが「社内事情に一番詳しいメンター」を持つ時代へ

  • 情報探索の時間を70%以上削減し、数億円のコストインパクト: キーワード検索では見つからなかった「意味合い(セマンティック)検索」が可能になり、「去年の夏にやった、Z世代向けのSDGs企画の詳細を教えて」といった曖昧で自然な質問でも、瞬時に企画書の要約と生データURLにたどり着けるようになりました。全社規模での劇的な時間短縮により、年間換算で数億円規模の人件費ロス相当の業務効率化(ROI)を達成しました。
  • 部署を跨いだイノベーションの誘発とサイロ破壊: 「実は隣の事業部で何年も前に似たシステムを調査していた」といった、これまで絶対に交わらなかった知見同士がAIチャットを通じて偶発的に結びつき、新たな企画開発のブレインストーミングや横断的なプロジェクトの立ち上げが活発化しました。
  • ナレッジの民主化とオンボーディングの革命: 属人化・死蔵されていたテキストデータが「対話可能な生きた資産」へと劇的に生まれ変わりました。新入社員は、先輩社員の時間を奪うことなく、24時間365日いつでも質問に即答し伴走してくれる、社内で最も物知りで優秀で優しいメンターを全社員が手に入れたことになります。

Tech Stack

PythonLangChainOpenAI API (GPT-4)Azure OpenAIPineconeNext.jsFastAPI
事例 #4IoT / Smart City / Data Visualization
地方自治体 × 大手通信キャリア 様

IoTセンサー網とデジタルツインを活用したスマートシティ防災プラットフォーム

IoTセンサー網とデジタルツインを活用したスマートシティ防災プラットフォームのアイキャッチ

1. 激甚化する災害への備えと、情報伝達の限界

近年、想定を上回る豪雨や突発的な気象災害が頻発する中、対象の地方自治体様では「既存の防災行政無線だけでは住民へ十分な避難情報が届かない」「河川の水位や避難所の混雑状況など、現場のリアルタイムな一次情報が災害対策本部に集約されるまでに致命的なタイムラグが発生する」という重大な課題を抱えていました。

これまで、各地の状況把握は自治体職員や消防団の「目視と足(現場への駆けつけ)」に大きく依存しており、職員自身の二次災害リスクも懸念されていました。特に夜間や悪天候時の情報収集は極めて危険であり、的確な避難指示を出すための「判断材料」が圧倒的に不足している状態が常態化していました。

そこで、街のインフラに張り巡らされたLPWA(低消費電力広域ネットワーク)と数千個のIoTセンサーを活用し、街全体の状況をリアルタイムかつ高精度に俯瞰できる「3Dデジタルツイン」を構築し、住民の命を守る次世代の防災プラットフォーム開発プロジェクトが立ち上がりました。

2. 街のリアルタイムデータを統合・可視化するデジタルツインアーキテクチャ

私たちは、市内各所に設置された水位センサー、土砂災害警戒センサー、気象観測センサー、そして主要交差点や避難所に設置されたAIカメラからの膨大なストリーミングデータ(Big Data)を、ミリ秒単位の低遅延で処理する高度なデータ基盤を構築しました。

バックエンドには、IoTデータの超高速処理に特化した AWS IoT Core とサーバーレスアーキテクチャ(AWS Lambda, DynamoDB)を採用。災害発生時の同時多発的なデータ流入(極端なトラフィックスパイク)に対しても、システムがダウンすることなく自動でスケールする強靭なインフラを実現しました。

収集されたデータはエッジ側およびクラウド側でリアルタイムにノイズ除去・分析(異常検知アルゴリズム)され、フロントエンドの ReactMapbox GL JS で描画された高精細な3Dマップ上へ「デジタルツイン(現実空間のデジタル複製)」として即座にマッピングされます。これにより、災害対策本部の巨大モニター上で、街全体の被害状況をゲームのようにインタラクティブに把握できるUIを完成させました。

3. 住民一人ひとりに「最適な避難行動」をAIが直接指示

災害対策本部(行政側)のダッシュボード開発と並行して、住民向けのスマートフォン向けWebアプリケーションおよびLINEミニアプリも同時開発しました。このアプリの最大の特徴は、「ユーザーの現在地(GPS)」と「リアルタイムな災害進行リスク(浸水予測シミュレーションや土砂災害危険度)」を掛け合わせ、プッシュ通知で一人ひとりにパーソナライズされた最適な避難ルートとタイミングをAIが提案する機能です。

例えば、「現在地から最寄りの第一避難所Aへ向かうルートは既に冠水が始まっています。少し遠いですが安全な高台の第二避難所Bへ、あと15分以内に避難を開始してください。なお、B避難所の現在の混雑率は20%です」といった、人命を救うための極めて具体的かつ実用的な行動指示(アクション・インサイト)を自動生成し、パニックを防ぐための分かりやすいUIで配信する仕組みを構築しました。

4. 実証実験から本運用へ。人命を守るテクノロジーの社会実装

  • 状況把握のリードタイムが「数時間」から「数秒(即時)」へ: センサー網とAIカメラの連携により、災害対策本部は「いま街のどこで異変が起きているか」をリアルタイムの3Dマップ上で瞬時に把握できるようになり、救助隊出動の初動対応スピードが劇的に向上しました。
  • 職員の安全確保と救助リソースの最適配置: 危険な現場への「確認のための見回り」が不要となり、安全な対策本部から的確な指示と、限られた救助リソースの優先配置(トリアージ)が行えるようになりました。
  • 住民の実態に即した避難完了率の向上: 曖昧な「警戒レベル〇」という一斉放送だけでなく、住民のスマートフォンに直接届く具体的な避難ルート案内により、実証実験を通じた防災訓練では、対象地区の高齢者を含む避難完了率が大幅に向上する結果が得られました。

このプラットフォームは現在、対象の複数自治体にて本格運用(スマートシティ実装)フェーズに入っており、さらなる広域連携や近隣都市へのシステム横展開に向けたスケーリング対応を進めています。「データ駆動型防災」の先進的なトップランナーとして、社会的意義の非常に高い画期的なプロダクトへと成長しています。

Tech Stack

ReactMapbox GL JSTypeScriptAWS IoT CoreAWS LambdaDynamoDBPythonGo
事例 #5E-Commerce / Headless Architecture
新鋭アパレルD2Cブランド 様

ヘッドレスコマースによる超高速・顧客体験特化型 次世代ECサイト開発

ヘッドレスコマースによる超高速・顧客体験特化型 次世代ECサイト開発のアイキャッチ

1. パフォーマンスの限界と「平凡な買い物体験」からの脱却

数十億円規模に急成長しているD2Cアパレルブランドのクライアント様は、既存の大手SaaS型カートシステムを利用してECサイトを運営していましたが、事業規模の拡大に伴い大きな壁にぶつかっていました。新作発売時のアクセス集中による「サイトの表示遅延や瞬間的なサーバーダウン」、そしてプラットフォームの制約により「ブランドの世界観を100%表現するリッチなUI/UX」を実装できないという深刻なジレンマです。

また、実店舗展開を含むオムニチャネル化の推進にあたり、店舗のPOSレジや公式モバイルアプリ、Instagram等とのシームレスな在庫連携やポイント連携が難しく、顧客に対して「いつでもどこでも最高のブランド体験」を提供するための足枷(技術的負債)となっていました。売上の機会損失は月に数千万円規模にのぼるケースもあり、フロントエンドとバックエンドの抜本的なモダナイゼーションが急務でした。

2. ヘッドレスコマース化:フロントエンドとバックエンドの完全分離

この課題を根本から解決し、将来の事業拡大にも柔軟に対応しうるアーキテクチャとするため、私たちはECのバックエンド機能(在庫管理、決済、顧客管理など)と、顧客が直接触れるフロントエンド機能(デザイン、UI/UX)を完全に切り離す「ヘッドレスコマース」アーキテクチャへの全面リニューアルをご提案しました。

バックエンドシステムは、APIファーストで非常に高いスケーラビリティと拡張性を誇るエンタープライズ向けコマースエンジン(Shopify Plus API)をハブとして採用。そして、ブラウザ側のフロントエンドには、Next.js (React)TypeScript を用いたフルスクラッチのSPA開発を行いました。

これにより、従来のSaaSカートシステムの制約を一切受けない自由な表現空間を獲得。ブランドの世界観を体現する自由自在なスクロールアニメーション(Framer Motion)、WebGLを用いた3Dモデルの商品ビューア、そしてローディング待ちを感じさせないシームレスな画面遷移など、妥協のないリッチなUI/UXデザインの実装が可能になりました。

3. Vercel × Edge Computingによる「爆速」レスポンスの妥協なき追求

ECサイトにおいて「画面の表示速度」は直接的にコンバージョン率(CVR)と売上に直結します。Googleの調査でも表示速度が1秒遅れるだけでCVRは20%低下すると言われています。今回のリニューアルでは、フロントエンドのホスティングに Vercel を採用し、Edge Network(CDNエッジサーバー)を活用した高度なキャッシング戦略を実装しました。

Next.jsの最新機能であるApp RouterとISR (Incremental Static Regeneration) を駆使することで、在庫状況や商品価格の更新はバックグラウンドでリアルタイムに反映させつつ、一般ユーザーへの各ページ配信は常にユーザーから最も近いエッジサーバーから「静的なキャッシュファイル」としてミリ秒単位で超高速レスポンスされる理想的な環境を構築。さらに、画像の自動最適化(次世代フォーマットWebP/AVIFへの変換)やJavaScriptの遅延実行、TBT(Total Blocking Time)の削減など、Core Web Vitals指標を極限までチューニングしました。

4. CVRとエンゲージメントの飛躍的な向上・ビジネスインパクト

  • ページロード時間が1/4に劇的改善: サイト全体の表示速度がミリ秒単位へ改善し、スマートフォン環境からのアクセスでも一切のモタつきを感じさせない「サクサクとした購入体験」を実現。それに伴い、直帰率が大幅に低下しました。
  • コンバージョン率(CVR)の圧倒的な向上と売上拡大: スピードの改善に加え、ブランドの魅力を最大限に引き出すリッチなUI(スクロール連動の動画背景や、スムーズなカート追加・決済アクション)が功を奏し、リニューアル後のCVRは旧サイト比で実に約1.8倍を達成。月商のベースアップに大きく貢献しました。
  • トラフィック急増への強靭なレジリエンス: コラボ限定商品の発売(ドロップ)時に発生する通常の数百倍のスパイクアクセスに対しても、エッジキャッシュとサーバーレス構成が機能することで、サーバーダウンや「アクセス集中画面」を出すことなく安定稼働し続け、機会損失をゼロに抑え込んでいます。

ヘッドレスコマース化によって手に入れた「柔軟なフロントエンド」と「堅牢なAPI基盤」は、今後メタバース空間でのバーチャルストア展開や、次世代のネイティブアプリ構築へと容易に拡張できる、強力な戦略的アドバンテージとなっています。

Tech Stack

Next.jsReactShopify Plus APIVercelGraphQLTailwind CSSFramer Motion
事例 #6FinTech / Payment Gateway / Backend
急成長中のフィンテック・スタートアップ 様

BtoB向け 次世代型クラウド決済ゲートウェイ(BaaS)の新規開発

BtoB向け 次世代型クラウド決済ゲートウェイ(BaaS)の新規開発のアイキャッチ

1. レガシーな金融インフラに「モダンなDX」をもたらす挑戦

既存の日本のBtoB(企業間取引)の決済システムや商習慣は、依然として手作業での紙の請求書発行、銀行振込、そして経理担当者による目視チェックでの消込作業という、非常にアナログで非効率な業務フローがマジョリティを占めていました。

クライアント様(急成長を遂げるFinTechスタートアップ企業)は、この巨大なマーケットペインを解決すべく、あらゆる企業が自社のSaaSやサービスに手軽に「請求から決済・自動消込・入金管理までの機能」を数行のコードで組み込める、画期的なBaaS(Banking as a Service)プラットフォームの立ち上げを計画されていました。

しかし、金融システムに絶対的に求められる「1円のズレも許されない究極のトランザクション堅牢性」と、スタートアップに求められる「モダンなAPIによる最高の開発体験(DX)」、そして「市場投入までの圧倒的なアジャイルなスピード」をすべて高い次元で両立できるエンジニアリング組織が不足しているという大きな課題があり、決済システム開発に深い知見を持つ弊社に白羽の矢が立ちました。

2. 堅牢性と拡張性を両立するクリーンアーキテクチャの徹底

金融・決済ドメインの複雑なビジネスロジック(与信審査、定期課金、部分返金、為替処理など)を、バグや不整合なく安全にコードに落とし込むため、私たちはバックエンドの設計に「クリーンアーキテクチャ(Clean Architecture)」ドメイン駆動設計(DDD)の思想を徹底的に適用しました。

開発言語には、静的型付けによる安全性と、並行処理(ゴルーチン)による圧倒的なパフォーマンスに優れた Go (Golang) を全面的に採用。「請求サービス」「決済サービス」「通知サービス」といった機能ごとのマイクロサービスアーキテクチャベースで各モジュールを疎結合に構築し、各サービス間は高速な gRPC で通信する設計としました。

また、トランザクションの完全な整合性(ACID特性)を担保するため、メインデータベースには分散トランザクションに強いフルマネージドの Amazon Aurora (PostgreSQL) を採用。さらに、外部のレガシーな銀行APIやクレジットカード決済ネットワークとの通信において、突発的な通信障害やタイムアウトが発生した場合でも、確実に処理をリトライ・冪等性を担保し、必要に応じてロールバックが可能な非同期キューイングシステム(Amazon SQS / EventBridge)を堅牢に組み込みました。

3. 真の顧客はエンジニア。圧倒的に洗練されたAPIとSDKの提供

このクラウド決済サービスの真の顧客(ユーザー)は、プラットフォームを利用して自社システムに決済機能を組み込む「導入企業のソフトウェアエンジニア」です。そのため、Stripe(米国の大手決済サービス)のような徹底的に洗練された「開発体験(Developer eXperience: DX)」の実現を至上命題としてUIおよびAPI設計を行いました。

外部公開するRESTful APIのインターフェース設計においては、OpenAPI (Swagger) 仕様に完全準拠させ、ドキュメントの自動生成と仕様の単一情報源化(Single Source of Truth)を実現。開発者が迷わない美しいドキュメントサイトを構築しました。 さらに、導入企業のエンジニアが数行のコードをコピペするだけでセキュアなクレジットカード決済画面や銀行振込用の仮想口座発行機能を組み込める、React / Vue向けのフロントエンドSDK、および Node.js / Python / Go 向けの使いやすいバックエンドSDKも自社開発し提供しました。

4. 年間数百億円のトランザクションを捌き、業界のデファクトへ

  • ビジネススケールを支える高可用性インフラ: マイクロサービスアーキテクチャと Kubernetes (Amazon EKS) によるインフラ構築により、月末・月初に集中する数十万件の重たいバッチ処理やAPIリクエストスパイクに対しても、無停止でのオートスケールを実現。可用性99.99%以上を維持しています。
  • 導入リードタイムの劇的な短縮による急成長: 洗練されたAPI設計と充実したSDK・ドキュメント群により、導入企業のエンジニアの開発工数は従来の古い金融API連携と比較して約1/5に短縮されました。これによりPMF(プロダクトマーケットフィット)の達成とクライアント企業の売上急成長を強力に後押ししました。
  • 「ゼロダウンタイム・ゼロロス」の達成: 本番稼働の開始から現在に至るまで、金融システムとして最も重要な「データの不整合・欠損エラー」をゼロ件に抑え込んだまま、年間数十億円〜数百億円規模の巨大なトランザクションを安全かつ正確に連続処理し続けています。日本のBtoB決済インフラをアップデートする重要なプロジェクトとして、現在も機能拡張を共に進めています。

Tech Stack

Go (Golang)Clean ArchitecturegRPCAmazon EKSAmazon AuroraRedisReactOpenAPI
事例 #7Healthcare / Telemedicine / WebRTC
全国展開の大規模医療法人グループ 様

患者と医師をシームレスに繋ぐ、オンライン診療・クラウド型電子カルテ統合プラットフォーム

患者と医師をシームレスに繋ぐ、オンライン診療・クラウド型電子カルテ統合プラットフォームのアイキャッチ

1. 医療現場の過酷な現状と、オンライン診療の壁

全国に数十のクリニックを展開する医療法人様では、患者の待ち時間の長期化と、それに伴う院内感染リスク、そして何より「遠方や高齢で通院が困難な患者層へのケア不足」が慢性的な課題となっていました。オンライン診療の導入は急務でしたが、市販のビデオ通話ツールでは「既存の電子カルテシステム(古いオンプレミス環境)と連携できない」という問題がありました。

また、「予約から事前問診、決済、処方箋の発行までが完全に分断されており、逆に現場の業務負荷が増える」「高齢の患者様にとってアプリのインストールや初期設定のハードルが高すぎる」という実運用上の致命的なボトルネックがあり、本格的な導入に踏み切れない状況が続いていました。

2. 診療体験を再定義する「オールインワン」プラットフォーム

私たちは、単なる「ビデオ通話アプリ」ではなく、予約〜問診〜診察〜クレジットカード決済・薬の自宅配送手配までを一気通貫で行える「まったく新しい病院のフロントエンド」のフルスクラッチ構築をご提案しました。アプリのインストールを不要とし、ブラウザだけで完結するWebアプリケーション(PWA形式)として設計しました。

最大の技術的チャレンジは、既存の重厚長大なオンプレミス型電子カルテ(HIS)システムとの安全かつリアルタイムな連携でした。私たちは、レガシーシステムとモダンなWeb層の間にセキュアなAPIゲートウェイと中継用の中間データベース(Data Hub)を構築し、医療情報ガイドラインに準拠したセキュアなデータ連係を実現しました。

これにより、医師は使い慣れたこれまでのカルテ画面に遷移することなく、新しく開発したスマートなWebダッシュボード上から患者の過去のカルテ情報や検査結果を参照しながら、ブラウザ一つでシームレスにオンライン診療を行える環境を整えることに成功しました。

3. WebRTCによる高画質・低遅延なセキュア通信網

診察のコアとなるビデオ通話機能には、P2P通信技術である WebRTC を採用しフルスクラッチで実装を行いました。既存のSaaSツール(Zoom等)に依存しないため、日本の医療情報のセキュリティガイドライン(3省2ガイドライン)に完全準拠した独自の強固な暗号化通信ルートを確立し、情報漏洩リスクを極小化しています。

また、患者側の端末(古いスマートフォンや通信速度の遅いMVNO環境)でも安定して映像・音声が途切れないよう、通信帯域に応じて動的に解像度や映像ビットレートを最適化する高度なSFU(Selective Forwarding Unit)アーキテクチャをクラウド上に導入。さらに、診察中に医師が共有したレントゲン・MRI検査画像を、患者側でリアルタイムに拡大・注釈(アノテーション)できる双方向のホワイトボード機能も組み込み、対面診療に限りなく近いリッチで安心感のある診察体験を実現しました。

4. 医療格差の解消と、新しい「かかりつけ医」の形

  • 通院の物理的ハードルをゼロに: リリース後、特に小児科や生活習慣病の定期再診においてオンライン診療の利用率が急上昇し、「これまで通院を諦めがちだった患者層」に対しても継続的で質の高い医療を提供できるようになりました。
  • 医師とスタッフの劇的な業務効率化: 自動化された事前のWeb問診システムと、オンラインクレジットカード決済の自動消し込みにより、受付スタッフの事務作業時間および診察前のカルテ入力時間が1回あたり約10分削減されました。
  • 待合室の混雑緩和と感染対策: オンライン診療枠の稼働に伴い、実店舗(クリニック)におけるピーク時の待合室の混雑が30%以上緩和され、インフルエンザ流行期などの院内感染リスクの低減と患者満足度(NPS)の向上に大きく貢献しています。

この統合プラットフォームは機能拡張を続けており、現在ではウェアラブルデバイスからのバイタルデータ自動取り込み機能のPoCも進められています。

Tech Stack

TypeScriptReactNode.jsNestJSWebRTC (SFU)WebSocketsAWS HIPAA-compliantHL7 FHIR
事例 #8Logistics / AI / Mobile App
大手ラストワンマイル・ロジスティクス企業 様

配送ドライバー向け 動的ルート最適化AIと運行管理システムの構築

配送ドライバー向け 動的ルート最適化AIと運行管理システムの構築のアイキャッチ

1. EC需要の爆発と「ラストワンマイル」の崩壊危機

ECサイトの急激な利用拡大に伴い、個別配送(ラストワンマイル)の荷物量は爆発的に増加。一方で、配送を担うドライバーの人手不足は深刻化しており、各ドライバーへの業務負荷が限界値を超えていました。特に課題だったのが、「どの荷物を、どの順番で、どのルートで配るか」という配送計画の策定プロセスです。

これまでは数年〜数十年の経験を持つベテランドライバーの「頭の中の地図と経験則」に完全に依存しており、新人ドライバーがそのスキル(土地勘や渋滞予測)を習得するには多大な時間が必要でした。さらに、交通渋滞や不在再配達の発生など、刻々と変わる状況に対してリアルタイムにルートを再構築することは人間には不可能であり、時間と燃料の大きな非効率を生んでいました。

2. 熟練ドライバーの「経験則」をAIで完全に再現・超越する

私たちは、ドライバーのスマートフォン(専用アプリ)へリアルタイムに最適な配送ルートを指示するAIシステムの開発に着手しました。単なる「最短距離」の計算(巡回セールスマン問題の解決)だけでなく、「現場の数え切れないリアルな制約条件」を数理モデルに学習させることに最も注力しました。

たとえば、「この大規模マンションは裏口からしかトラックが入れない」「この時間帯はこの交差点が確実に混む」「午前中指定の荷物と、14時指定の荷物をどう組み合わせるか」「トラックの積載重量と荷台の容積制限」といった複雑な変数を組み込んだ独自の数理最適化モデル(メタヒューリスティクス・アルゴリズム)をPythonと OR-Tools で構築。

膨大な組み合わせ最適化計算を瞬時に終わらせるため、インフラには AWS SageMaker とGPUインスタンスを活用した並列処理アーキテクチャを採用しました。これにより、数千個の荷物の最適な振り分けとルート計算をわずか数十秒で完了させる圧倒的な演算能力を実装しました。

3. 現場で「本当に使われる」モバイルアプリ体験と堅牢性

どんなにバックエンドで優れたAIを作っても、手袋をした忙しいドライバーが雨の現場で使えなければ意味がありません。ドライバー向けのネイティブアプリは React Native を用いてiOS/Android両対応で開発し、片手でもスムーズに操作できる巨大なボタン、カーナビゲーションレベルの直感的な3D地図表示、そして配達完了時のデジタルサイン取得(電子署名)や写真撮影(置き配エビデンス)機能をシームレスに統合しました。

さらに、高層ビル群や地下駐車場、山間部など「完全に電波の届かないオフライン環境下」でもアプリがクラッシュせずに動作し続け、配達記録を保持・通信復帰後にバックグラウンドで自動送信するローカルデータベース(SQLite)との高度な同期メカニズムを実装。現場の過酷な環境にも耐えうる最高レベルの堅牢性を確保しました。

4. ベテランと新人のスキルの壁を無くし、利益率を改善

  • 配送効率の飛躍と残業削減: AIが弾き出したナビゲーションルートに従って走行するだけで、ベテランドライバーと同等以上の効率で配達が可能になり、1日あたりの平均配達完了件数が約25%向上。ドライバーの長時間の残業問題も大幅に改善しました。
  • 新人研修コストの劇的な削減: 「道を覚える」「効率的なルートを考える」という最も属人的で教えるのが困難なスキルが不要になったため、新人ドライバーが現場で即戦力として独り立ちするまでの研修期間が、数ヶ月から「わずか数日」へと劇的に短縮されました。
  • 年間数億円規模のコストダウンと環境貢献: 無駄な走行・迂回距離や渋滞への突入が減ったことで、保有するトラック数千台の燃料費・維持費が年間数億円規模で削減されました。同時にCO2排出量の削減(Green Logistics)にも直結し、企業のESG投資目標達成にも貢献しています。

Tech Stack

PythonAWS SageMakerReact NativeGraphQLPostgreSQLPostGISOR-Tools
事例 #9EdTech / Web Application
全国展開の大手学習塾・予備校 様

生徒一人ひとりの理解度に寄り添う、アダプティブ・ラーニング学習システム

生徒一人ひとりの理解度に寄り添う、アダプティブ・ラーニング学習システムのアイキャッチ

1. 集団授業の限界「置いてけぼり」と「退屈」への挑戦

「1対多」の伝統的な集団授業スタイルを提供する大手学習塾クライアント様では、長らく「クラスの平均レベルに合わせた画一的な授業進行」を行わざるを得ませんでした。その結果、理解の早い生徒にとっては「簡単すぎて退屈(学習意欲低下)」であり、逆に基礎でつまずいている生徒にとっては「置いてけぼり(学習放棄)」になってしまうという、教育業界における根本的な構造課題を抱えていました。

講師たちは長年の経験と勘に基づいて宿題の難易度を一人ひとり調整しようと試みていましたが、数百人の生徒全員の「どの単元で、なぜつまずいているか」を正確かつリアルタイムに把握することは実質不可能でした。そこで、「生徒の個性を潰さない、一人ひとりに完全最適化された究極の学習体験(パーソナライズド・ラーニング)」を提供するためのシステム開発がスタートしました。

2. 項目応答理論(IRT)を用いた「真の学力」の測定と推論

私たちは、生徒がタブレットから問題を解く過程のあらゆる学習ログデータ(正答率、回答にかかったミリ秒単位の時間、過去の類似問題の正解履歴、見直しの有無など)をクラウドに収集し、リアルタイムに分析してモデルを更新する強靭な「アダプティブ(適応型)エンジン」を開発しました。

この推論エンジンのコアアルゴリズムには、TOEIC等の大規模試験でも用いられる「項目応答理論(Item Response Theory: IRT)」をベースにした高度な統計アルゴリズムを採用しています。単なる表面的な「点数」での評価ではなく、数万問に及ぶ問題の難易度パラメータと生徒の「真の能力値(潜在特性)」を多次元のベクトルとして算出し、「この生徒が今、次に解かせるべき最も学習効果の高い最適な1問」をAIシステムが瞬時に自動選択・出題します。

つまり、生徒がスラスラと正解し続ければ問題は徐々に難しくなり(退屈させない)、つまずいたり回答時間が長くかかった場合は、要因となっている基礎的な問題やピンポイントの解説動画へ自動的・段階的に誘導(ブレイクダウン検証)される仕組みです。

3. ゲーミフィケーションによる「学習の習慣化」の魔法

どんなに裏側の推論エンジン(AI)が優れていても、子供たちが進んで毎日タブレットを開いて勉強してくれなければ全く意味がありません。フロントエンドの開発(Vue.js / Nuxt.js)では、UI/UX専任のアートディレクターと共に「いかに楽しく学習の中毒にさせるか(ゲーミフィケーションの極致)」にこだわりました。

RPGゲームのように、単元ごとにステージをクリアしていくワクワクするUIレイアウト、連続学習日数(ストリーク)に応じたレアな称号バッジの付与、自分のレベルアップが美しいアニメーションと共に視覚化されるダッシュボードなど、子供たちのドーパミンを引き出し内発的動機付けを強く刺激するマイクロインタラクションを随所に散りばめました。また、保護者向けLINE(通知ボット)や、講師が教室の全生徒の「つまずきアラート」を俯瞰できる管理用ダッシュボードも別途開発・提供しています。

4. 学習定着率とビジネス指標(LTV)の圧倒的な改善

  • 自学自習時間の倍増: ゲーミフィケーションの仕組みと、「自分のレベルにピッタリ合った(難しすぎず簡単すぎない「フロー状態」を生む)出題」により、「解けないイライラ・ストレス」が完全に解消。自宅での自学自習の平均時間がシステム導入前の約2.8倍に激増しました。
  • 講師の役割のパラダイムシフト: 講師は「全員に向かって同じ黒板板書をする人」から、ダッシュボードを見て「特定の問題でアラートが出ている生徒の席へ行き、個別でメンタルフォローをするメンター・コーチングのプロ」へと役割を大きく、そして効果的に進化させることができました。
  • 年間数十億円規模の売上貢献(退塾率低下・継続率UP): 成績が伸び悩んでいた(置いてけぼりになっていた)層のモチベーション劇的改善と学力・偏差値スコアの向上に成功。システム導入対象の全校舎において、退塾率が前年比で半減するという、LTVの観点で年間数億円〜数十億円規模のダイレクトなビジネス成果(インパクト)を達成しました。

Tech Stack

Vue.jsNuxt.jsTypeScriptRuby on RailsMySQLRedisAWSData Analytics
事例 #10AI / Voice Interface / RAG
全国展開の大手ホテル・飲食チェーン 様

音声LLMを活用した「24時間365日対応」の自動電話予約・案内AIシステム

音声LLMを活用した「24時間365日対応」の自動電話予約・案内AIシステムのアイキャッチ

1. 鳴り止まない電話と、機会損失・慢性的な人手不足

全国で数百店舗のホテルやレストランを展開するクライアント様では、店舗への電話対応によるスタッフの疲弊が深刻な経営課題となっていました。「今日の営業時間は?」「駐車場はありますか?」といった定型的な問い合わせから、ピークタイムにおける予約やキャンセルの電話が鳴り止まず、目の前にいる来店客への接客サービス品質が低下してしまう事態が多発していました。

また、夜間や早朝、休業日などスタッフが電話に出られないタイミングでの「予約の取りこぼし(機会損失)」は月間で数千万円規模にのぼると推計されており、慢性的な人手不足の中で「いかに人間を電話応対業務から解放するか」が急務となっていました。既存のIVR(プッシュボタンプッシュ式の自動音声応答)は顧客体験が悪く、途切呼(離脱)率が高い傾向にあったため抜本的な解決策が求められました。

2. Twilio × Whisper × LLMによる「自然な会話」の実現

そこで私たちは、単なる一問一答のボットではなく、人間のように自然に対話し、文脈を理解して予約の取得や案内を自律的に行う「AI音声受付システム」をゼロから開発しました。

電話回線の制御レイヤーにはクラウド通信APIの Twilio を採用。お客様の話し声(音声ストリーム)をリアルタイムに取得し、OpenAI WhisperGCP Speech-to-Text のアンサンブルモデルによって高精度にテキスト化(STT: Speech-to-Text)します。特に、騒音環境からの電話や高齢者の不明瞭な発話、方言等に対しても高い認識率を誇るノイズキャンセリング・チューニングを実装しました。

テキスト化された質問に対しては、GPT-4クラスの最新LLM(大規模言語モデル)のAPIを通して、人間らしく丁寧な言葉遣いで応答文章を生成。それを瞬時に自然な音声に変換(TTS: Text-to-Speech)してお客様の受話器へ返す、ミリ秒単位の超低遅延パイプライン(FastAPI + Redis / Celery)を構築し、「AI特有の不自然な会話の待ち時間(間)」を極限まで削ぎ落としました。

3. QdrantによるRAGアーキテクチャと予約APIとの連動

AIが誤った情報(ハルシネーション)を案内するリスクを完全に排除するため、LLMの応答生成には RAG (Retrieval-Augmented Generation) アーキテクチャを導入しました。店舗ごとの何万ページにも及ぶマニュアル、設備情報、料金テーブル、FAQなどをベクトル化し、超高速ベクトルデータベース Qdrant に格納。お客様からの質問に直接関連する公式のみを瞬時に検索(Retrieval)し、その事実ベースのみを元にAIが回答する仕組みです。

「明日の19時から3名で予約できますか?」といった空席確認や予約取得の要望に対しては、AIが意図(Intent)とエンティティ(日時、人数、コース等)を抽出し、既存の店舗予約管理システム(SaaS)のAPIを裏側で直接叩いて空き照会を行います。空いていればそのまま仮予約のデータベース登録までをAIが全自動で完遂し、SMSで確定のメッセージをお客様へ送信する非同期ワークフローを構築しました。

4. 労働集約型からの脱却と、年間数十億円の売上貢献

  • 店舗スタッフの電話対応時間を70%削減: 日常的な問い合わせの大部分をAIボットが完璧に処理できるようになったことで、スタッフは「目の前のお客様への最高のおもてなし(接客)」というコア業務に100%集中できるようになり、従業員満足度とサービス品質が劇的に向上しました。
  • 「24時間365日」の取りこぼしゼロ体制による予約数激増: 今まで電話に出られず失注していた早朝・深夜やピークタイム直前の「当日予約コール」をAIが確実に拾い上げ、システムの稼働開始からわずか3ヶ月で店舗全体の予約獲得数が前年比で約15%増加。年間換算で数十億円規模の売上アップという絶大なビジネスインパクトをもたらしました。
  • 多言語へのシームレスな対応: インバウンド(訪日外国人)の急増に合わせ、同じAIアーキテクチャに英語・中国語・韓国語の言語パックを導入。スタッフの語学力に依存することなく、海外からの電話予約にも24時間多言語で完璧に応対できる体制(自動翻訳コンパニオン)を確立しました。

Tech Stack

OpenAI WhisperGCP Speech-to-TextTwilioPythonRedisCeleryQdrant (RAG)FastAPI